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岩波科学20167月号の島崎邦彦氏の「最大クラスではない日本海『最大クラス』の津波―過ちを糺さないままでは『想定外』の災害が再生産される」へのコメント

7月9日第1版掲載
7月12日第2版掲載
7月13日修正版掲載iwanamikagaku-comment-Jul13-2016.pdf へのリンク

島崎邦彦氏の日本地球惑星科学連合2016年大会(2016/05/25)での発表「過小な日本海「最大クラス」津波断層モデルとその原因へのコメント
6月22日第1版掲載
6月24日修正版掲載comment_final-revision3.pdf へのリンク



東日本の大震災について

20113111446分(日本時間)にモーメントマグニチュード9.0という日本における観測史上
最大の東北地方太平洋沖地震が発生しました。超巨大な地震とそれに伴う強力な津波により、多くの
方々が、亡くなられ、また被災されました。犠牲になられた方々、ご遺族の皆様に対し、謹んで
お悔やみを申し上げます。
命は助かっても家を失い過酷な避難生活を強いられている皆様に、
できるだけ早く生活再建するための援助が届き、被災地の復旧と復興が実現することを、

心より願っております。

 このように巨大な地震の発生が予測できず、地震に対する防災対策が十分にはなされてこなかった
ことに対し、地震学の研究者として、責任を痛感しております。これまでの地震学および関連する地球科学や耐震工学に基づく地震防災の研究の在り方に問題があったことを認識し、今後の研究に生かしていくことが重要と考えます。
 今回の地震の被害を拡大しているのは、原発災害が重なったことにあります。この問題について、内閣府の原子力
安全委員会の下にある耐震関係の委員会の専門委員をしている私は責任を負うべき立場にあると考えています。
しかしながら、今回の福島第一原発の重大事故は、決して地震の規模や津波が想定以上に大きかったことが主たる
原因ではないと考えます。

 20069月に改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」には、「想定された地震動を上回る強さの地震動が生起される可能性は否定できない」、その場合でも、「残余のリスク(想定以上の外力に対しても施設の
重大な損傷、施設からの放射線物質の放散、結果として周辺公衆が放射線被ばくするリスク)を合理的に実行可能な
限り小さくするための努力がはらわれるべき」と明記されています。これは、地震に伴って生成される津波などの
随伴事象に対しても当然適用されるものです。原子力発電所の設計の基本方針として、想定されていない事象が発生
しても原子力発電所の安全性は保たれるように設計するという「多重防護」の考えがあります。「多重防護」は原子力発電所の設計思想そのものです。福島第一原発が「施設からの放射線物質の放散」という重大事故に至った主たる
原因は、原子力発電所の「多重防護」の考えが守られていなかったことにある、と考えます。


平成20年(2008年)3月19日
昨年12月28日付けで掲載しましたファイルを一部修正して再掲載しました。(PDF2941kb)

平成19年(2007年)12月28日
12月27日付けで掲載しましたファイルを一部修正して再掲載しました。

平成19年(2007年)12月27日
12月24日付けで掲載しましたファイルを一部修正して再掲載しました。

平成19年(2007年) 12月24日
2007年新潟県中越沖地震の強震動ーなぜ柏崎刈羽原子力発電所は想定以上の破壊的強震動に襲われたのか?ー


入倉孝次郎(愛知工業大学地域防災センター)・
香川敬生・宮腰 研(地域 地盤 環境研究所)・
倉橋 奨(愛知工業大学)

新潟県中越沖地震は海域に起こったため、地震観測や地殻変動観測が震源域の東側に遍在しており、余震の決定精度が悪く、またGPSやSARなどによる地殻変動からもユニークな断層面解が得られず、これまで震源断層が南東傾斜か北西傾斜かの特定が困難であった。強震動と距離減衰の関係は全般的にはこれまでの標準的な距離減衰式に一致するのに、震源断層に近い柏崎刈羽原発で記録された強震動は経験式から推定される地震動よりも顕著に大きい、という謎があった。我々は、震源断層が北西傾斜と仮定すると、破壊が海側から陸側に進行するため、柏崎刈羽の地震動は破壊進行方向に生じるデレクティビティ効果により顕著に大きくなった可能性を指摘した。しかしながら、科学技術振興調整費「新潟県中越沖地震に関する緊急調査研究」(東京大学地震研究所など)で海底地震計による余震観測により再決定された余震分布は震源断層が南東傾斜であった可能性を強く示唆しており、北西傾斜の震源断層を仮定した上記の考えは再検討する必要があった。震源断層が南東傾斜とすると、柏崎刈羽は震源断層における破壊の進行方向にならず、デレクティビティ効果の影響は小さいと考えられる。そこで、本研究では、南東傾斜の震源断層によりなぜ柏崎刈羽が大きな強震動に襲われたかについて改めて検討を行った。
 経験的グリーン関数法及び理論的グリーン関数を用いた強震動のシミュレーションと観測記録の比較検討により、次の事実が明らかになった。
この地震の震源断層は3つのアスペリティ(Asp1、Asp2、Asp3)を有していること、柏崎刈羽原発で観測された3つのパルス波は3つのアスペリティから地震動に対応している。柏崎刈羽原発で想定以上に大きな強震動に襲われた原因は、@柏崎刈羽の沖合に強い地震動を生成するアスペリティ(Asp3)があり、A柏崎刈羽はそのアスペリティから発せられるS波の放射特性が最大となる方向にあたること、Bそのアスペリティから発せられた地震波が伝播経路でのフォーカッシングと厚い堆積層により大きく増幅され、柏崎刈羽で強いパルス波が生成されたこと、にあると考えられる。
 本研究は地域地盤環境研究所の香川敬生氏、宮腰 研氏、および愛知工業大学の倉橋 奨氏との共同研究によるものである。
                                                            入倉孝次郎


平成19年(2007年)9月28日
第173回文部科学省地震調査委員会(2007年9月10日開催)での発表資料(PDF6245KB)

平成19年(2007年) 9月4日

2007年新潟県中越沖地震の強震動と震源断層モデル −柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動―

入倉孝次郎、香川敬生、宮腰 研、倉橋 奨

2007年新潟県中越沖地震は気象庁マグニチュード6.8の中規模地震なのに、震源域に近い柏崎刈羽発電所は想定以上の大きな強震動に襲われた。「なぜ原発がこのように大きな強震動の直撃を受けたのか」の原因を明らかにするために、ここでは強震動と震源となった断層の破壊過程の関係について検討を行う。

震源断層について、地震調査委員会の評価(平成19年8月8日)では、「余震分布、地殻変動データ、本震の地震波形データおよび津波データの解析結果でも、本震の震源断層が南東傾斜、あるいは北西傾斜を決定することは、現時点では出来なかった」とされているが、震源に近い刈羽村から柏崎市にかけた新潟県の沿岸地域における強震動記録に見られる顕著なパルス波形は北西傾斜の震源断層上の3つのアスペリティを想定することにより説明可能となる。ただし、佐渡側の強震動記録を説明するために南東傾斜の分岐断層の可能性はある。

柏崎刈羽原発において顕著に大きい地震動が記録されたのは、柏崎沖約 7 km、深さ約 7 kmにあるアスペリティが海側から陸側に向かって破壊したため、柏崎刈羽原発の方向にディレクティビティ・パルスが生じたことによる、と考えられる。(PDF5MB)(9月4日15:10修正版を再掲載しました)

   
その他のメッセージ

日本地震工学会の会誌第5号(2007年1月末出版予定)の発電用原子炉の耐震設計審査指針の改訂に関する特集で、「基準地震動」についての解説の執筆依頼を受け、「原子力発電所の耐震設計のための基準地震動」と題する解説文を寄稿しましたメッセージ(76KB) (PDF360KB)

2006年9月8日 「平成18年防災功労者防災担当大臣表彰」受賞
 謝辞

巨大地震対応の緊急地震速報の構築の提案 関西地震観測研究協議会ニューズレター No8掲載 129KB

入倉孝次郎地震動研究所設立挨拶 134KB

NHKサイエンスゼロ「2005年度科学ニュース特集」 160KB

日本学術会議 第20期会員就任に際して 63KB

安芸敬一先生追悼文 101KB

京都大学広報誌 「楽友(Raku-Yu)」7号(2005年春号) 巻頭言975KB 36KB

京都大学理事・副学長就任に際して252KB